水餃子の<あき酒店>キョー兄ィ ②

キョー兄ィ

2015年05月22日 21:18

 宮古島は昼の海も素晴らしいが夜の街も充実している。昼の部と夜の部とそれぞれに楽しめるので、寺山修二風に言うと<観光で来られた皆さ~ん、宿を出て宮古の夜の街に出よう>と言いたいところだ。
 僕は学生時代に寺山さんと対談したことがある。寺山さんの<書を捨てて町に出よう>の本が大ヒットし、日本中の多くの若者を刺激して新宿などの都会にヒッピーみたいのが続々出現した時代だ。
 生意気にも寺山さんに食ってかかった<書を捨てて町に出たところで都会で勝負して勝てるのはタフで才能があり他人との競争に勝てる人だけなのではないですか?>てね。
 事実この僕が都会の中ではどうやって生きていけば良いのか、学生生活からの脱出口が見つからなかった。
<行き詰ったときは南を目指せ>確かランボーのそんな言葉をどこかで読んだ。
そして沖縄、最初は那覇だったが給与以上に飲みすぎた。次は隣の浦添市、そこでもまた転んで気がつけばバッグ一つで宮古島だ。
<行き詰ったときは南を目指せ>この言葉だけが頼りだった。
 あき酒店で飲んでいるうちに気分が急に爽快になってきた、なんだか何もかもが楽しくなってきた。今夜は永遠に続き明日は永遠に来ないような気がしてきた。
 昨日の写真に写っているきゅうりのような和え物はあきが栽培したのか、何かそんな話をしながら出してくれた巨大なオクラだ。本来ならば水餃子の写真を見せなければいけないところだが、もうかなり酔っていて肝心な写真を撮ることを思い起こせなかった。
 ついでに相棒との大切な約束を忘れてしまった。<12時には帰ろうね>これは僕の方から相棒に釘をさした言葉だ。12時を大きく回ったことを教えてくれたのは相棒の方だ、しぶしぶ帰ろうとして店を出ると遠くにBARボックリーの白壁がくっきりと輝いている。あのカウンターに座って飲みた~い。店主のケンジをいじってやりた~い。
<もう一杯だけだから~>、あきれる相棒の背中を強引に押しボックリーに入ったことまでは覚えている。
 翌日はもちろん二日酔いだ、胸のポケットの中には割り勘で消えているべきはずのお金がまだそのまま残っていた。





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